ジャズ・ピアニストとしてそのキャリアをスタートさせましたが、手の故障によりピアノが弾けなくなった時期があり、勧められてヴォーカルを始めたそうです。
回復した今ではピアニスト兼ヴォーカリストだけでなく、オーストリアの大学でジャズヴォーカルを教える教育者としても活躍しています。
彼女の歌の特色は、自身が奏でるピアノのフレーズとのユニゾンによる巧みなスキャット。
はじめて聞いた時、使っていたシラブルがチェット・ベイカーのように軽やかだったのが新鮮でした。
弾き語りなので、歌の合間のバッキングのタイミングも絶妙。
ヴォーカリストとしての全リーダーアルバムを年代順に聴いたので、お勧めをご紹介しますね。
デビューアルバムが出されたのは1998年ですが、初期のアルバムはスタンダードが多く選曲されていて、楽器奏者ならではのセンスにあふれたアレンジが勉強になります。
私のお気に入りは2000年のアルバム“I Can See Clearly Now ”。
2007年の“Live at Jazz Standard, Vol. 1”は、ライブならではの迫力ある演奏が楽しめます。
弾き語りで有名なヴォーカリスト、シャーリー・ホーンの名曲を集めた2014年のアルバム“We Won't Forget You: An Homage to Shirley Horn”ではシャーリーの歌と聴き比べてみました。
バラードではシャーリーの重厚な表現が圧巻ですが、swingyな曲では勢いのあるディナの歌に心惹かれました。
それぞれの個性が楽曲に生かされているのがわかります。
最後のお勧めアルバムは昨年出された“Ode To The Road”
メンバーは2004年のアルバムから共演している Martin Wind(b)とMatt Wilson(ds)。
Houston Person(ts)とJeremy Pelt(tp)に加えてシーラ・ジョーダンが参加し、ディナと2曲デュエットしているのが必聴。
私の好きなマーク・マーフィーやボブ・ドローの曲も複数取り上げられていて、ディナがどんなヴォーカリストから影響を受けていたのかがよくわかります。

ライナーノーツの中で彼女は、「私はインプロヴァイズが好きだけれど、メロディの音をずっと変えていると、人の耳はそちらに行ってしまい、ストーリーを見失ってしまいます」と述べていました。
楽器奏者ならではのジャズ・フィーリングにあふれたフレージングは、ヴォーカリストとしての歌心によって洗練され、より魅力的なものになっているのだと思いました。

にほんブログ村

ジャズランキング