2016年04月14日

儚げに歌うトランペッター:チェット・ベイカー〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(13)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第13回目はChet Baker(1929 – 1988)です。

楽器を演奏するミュージシャンで歌 “も” うたえる人は少なくないと思うのですが、
彼の場合は、楽器の演奏家としてもヴォーカリストとしても高く評価されている。
しかも楽器と声が一体になっていて、歌のメロディのようにアドリブのフレーズを楽器で奏でている。
そんなジャズ・ミュージシャンは、ルイ・アームストロングとチェットぐらいなのではないかと思うのです。

二人ともトランペット奏者なのですが、それも偶然ではないような気がします。
声帯を振動させて私たちが歌を歌うように、トランペッターは唇を振動させてメロディーを演奏しているらしい。
唇で “歌って” 演奏する・・そんな楽器の特性が、優れたヴォーカリストを輩出する背景にある気がしてなりません。

今回はチェットが歌を披露しているアルバムのうち、手元にあった32枚を年代順に聴いて、お勧めをリストアップしました。

1枚目は名盤と言われている“Chet Baker Sings”(1956)。
ストレートに声が伸びたけだるい物憂い歌い方が特徴的。
この中の‘My Funny Valentine' は彼のアルバムの中で数多く歌われている代表曲です。
8194ywDBBNL__SY355_.jpg

息をたくさん吐きながら声を出しているのは、トランペット奏者だから?と思っていたところ、
ウイキペディアに「チェットの歌い方にジョアン・ジルベルトがインスパイアされ、ボサノヴァ誕生の一因となったと言われている」と書かれていました。
なるほど。そういえば私も、ボサノヴァの曲を歌うときは息をたくさん吐きながら・・・なんて師匠から教わりましたっけ。

次のお勧めは“Chet Baker Sings;It Could Happen to You”(1958)。
当時の人気ぶりを思わせるアイドル歌手のようなジャケットですが、ミュージシャン好みの選曲と、“Chet Baker Sings”とは若干イメージが異なるエモーショナルな演奏が楽しめます。

61B16qRt6NL__SY355_.jpg

チェットのジャズの演奏スタイルはウェストコースト・ジャズと言われているもので、50年代にアメリカ西海岸で白人中心に演奏された明るく軽やかなジャズ。
それに対しこのアルバムで共演しているのは、ピアニストのケニー・ドリュー、ベーシストのサム・ジョーンズ、ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズといった、東海岸で黒人を中心に演奏されたハード・バップと呼ばれる演奏スタイルのミュージシャンたちです。
共演者が変わると、演奏の印象も変わるんですね。

後年のチェットは、麻薬に溺れて悲惨な生活を送るようになり、全盛期は50年代だと言われていました。
そんな時代に録音された彼のヴォーカル曲を集めた3枚組のCDが発売されています。
“Chet Baker Sings:The Complete 1953-62 Vocal Studio Recordings”(2014)
51jvByGIhLL.jpg

最後に。ジャズ・ヴォーカルを勉強している方は、歌だけでなく、彼のアドリブ・フレーズにも、是非注意して耳を傾けていただけたらと思います。
ウェストコースト派の演奏だからでしょうか、フレーズが印象的で覚えやすいですし、歌ったあとに引き続きトランペットで演奏されるアドリブのフレーズが、歌のイメージそのままの演奏になっていて、ヴォーカリストがスキャットをする時の格好のお手本になると思うのです。

どんな音が使われているのか気を付けながらCDにあわせてフレーズを口ずさんでいると、サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドのスキャットとは違う、楽器奏者ならではのジャズのフレーズを、学ぶことができるのではないかと思います。

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
posted by ありあ at 03:22| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: