以前にこのブログでも新しいアルバムを紹介したピアニスト兼ヴォーカリストのShirley Horn (1934 –2005)。
彼女がニューヨークに進出したのもマイルス。デイヴィスらの勧めがあったからで、多くのジャズ・ミュージシャンが賞賛してきた実力派です。
私の周りのシンガーにも彼女のファンが多数おられます。
今回は手持ちのアルバム23枚を年代順に聴いていきましたが、バラードの美しさもさることながら、力強いスタイルのswingもお得意で、どれがお勧めなのか迷うほどでした。
有名なアルバムではマイルスのレパートリー曲を97年に録音し、グラミー賞を受賞した“I Remember Miles”がありますが。
ここでは、マイルスが珍しくヴォーカリストのサイドマンで参加した1991年録音の“You Won't Forget Me”をご紹介します。
マイルスが、亡くなる直前のミュート・プレイをタイトル曲で披露しており、そのほかにも、ウィントン・マルサリス(tp)、ブランフォード・マルサリス(ts)、トゥーツ・シールマンス(g, harmonica)といった豪華なゲストが参加しています。

マイルスから彼女が評価されていたのも「間」の感覚が彼の演奏に共通していたからではないかと言われたりしていました。
彼女の場合‘It Had to Be You’のようなバラードで聴かれるテンポが超スロウ。
swingする曲でも、歌うフレーズの合間にオブリガート(ソロの合間にメロディを入れること)がしっかり絡んでいます。
ヴォーカリストとピアニストが別々の場合には、フレーズの最後にヴォーカリストが意識的に間をとると、ピアニストがそれに気づいてオブリをはさんでくれて、両者の掛け合いになったりします。
あるいは、ピアニストのオブリを聴いていて、それらが終わったタイミングで歌のフレーズを入れたり。
私の場合はそんな感じで、そうやってその場その場での掛け合いを成立させるところに、スリリングな面白さがあるのですが。
彼女の場合には、それらを一人でやっているのですから、自分の歌にピアノのサウンドを絶妙に絡ませることができるわけで。
変化がつけにくくなる超スロウのバラードでも、合間にコーンとアクセントを効かせたサウンドを響かせたり。
そのほかに私が好きなアルバムは、ジョー・ヘンダーソン(ts)やエルビン・ジョーンズ(ds)が参加している“The Main Ingredient”(1996)。
比較的初期のアルバムでは“A Lazy Afternoon”(1978)。
ばりばりスキャトをしたり、原曲の姿をとどめないようなアレンジをしたりといった派手さはないですが、歌心がわかる歌伴がしたいと願うピアニストの方にも格好のお手本になる名演ぞろいです。

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