2016年07月13日

自由奔放なインプロヴァイザー:ベティ・カーター〜はじめて聴くジャズボーカル(16)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第16回目はBetty Carter(1929-1998)です。

M.Gridleyというミュージシャンがジャズの歴史について著した“Jazz Styles”という著作。
これまでに5カ国語で翻訳され、私の手元にあるのは2012年に発行された第11版なのですが、そこに紹介されているヴォーカリストは、ブルースシンガーのベッシー・スミス、このブログでも紹介したビリー・ホリデイ、サラ、エラとベティ・カーターだけでした。
その中でベティは、スリリングな演奏スタイルで、ミュージシャンやシンガーから最もリスペクトされていたジャズ・シンガーだと紹介されています。
今回は、手元にあった23枚のアルバムを年代順に聴き、お勧めをセレクトしてみました。

彼女の初期のアルバムは、サラのような深い声を響かせて、比較的素直なフレーズで歌っているのですが、私が聞いた限りでは、60年代中期頃から個性が炸裂しはじめる感じです。

例えば1979年に録音されたライブ盤“The Audience with Betty Carter”。
その1曲目‘Sounds’ では、ミュージシャンにソロ回しせずに、所要時間25分のうち23分間ひたすら一人でスキャットしまくっていました!
バラード‘Spring Can Really Hang You Up The Most’ では、原曲のメロディを崩しすぎてて、歌詞やコード進行を注意して聞いてないと何の曲か聞き取れなかったり・・・。
・・・といった具合なので、彼女の歌は好みが分かれるのではないかと思います。

即興性豊かで器楽的な彼女の歌唱法を味わうには、良く知られたスタンダード・ナンバーをどんな風に歌いこなしているのか、聞いてみるのが一番。
1976年録音のライブ盤“ I Didn't Know What Time It Was”(リリースは1994年)は、タイトル曲をはじめとしてスタンダード・ナンバーが数多く収録されていてお勧めです。

 ・・といいながら、彼女のオリジナル曲も私は大好き。
 このアルバムに収められた‘Tight’ や先ほど紹介した‘Sounds’は超カッコいいですよ

次のお勧めは1993年のライブ盤 “Feed the Fire”。
ミュージシャンはピアノがジェリ・アレン(Geri Allen)、ベースがデイヴ・ホランド(Dave Holland)、ドラムがジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)という素晴らしいメンバーです。
ベースとのデュオやドラムとのデュオの曲があり、ヴォーカルと楽器とのインタープレイのお手本をじっくりと聞くことができます。
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今回はいずれもライブ盤をお勧めしましたが、ライブでの演奏だからこそ、彼女の歌にあわせてバックの演奏が刻々と変わっていく、即興性にあふれたジャズ・ヴォーカルの醍醐味を堪能できるのではないかと思います。

さて、これまで16回にわたって、はじめてジャズ・ヴォーカルを聴く方にお勧めしたいアルバムをご紹介してきましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?
専ら私が聴きこんでいるヴォーカリストが中心でしたが、クリス・コナーやメル・トーメなど、この機会にまとめて聴くことができたヴォーカリストも何人かいたので、私自身もとても勉強になりました。

次回からは、ジャズ・ヴォーカルの名盤と呼ばれるアルバムや名演と呼ばれる演奏の聴きどころ−こんな風に聴くと面白いですよ−といったところを、ジャズ・ヴォーカリストなりの視点で、またご紹介していきたいと思います。
お楽しみに!

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posted by ありあ at 03:28| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2016年06月02日

多彩な音楽性にあふれたエンターテイナー:マンハッタン・トランスファー〜はじめて聴くジャズボーカル(15)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第15回目はThe Manhattan Transfer。
前回ご紹介したランバート・ヘンドリックス&ロスの影響を受けたコーラスグループです。

1972年に結成されていますが、全盛期のメンバーは、
リーダーのティム・ハウザー(1941- 2014:没後はトリスト・カーレスが参加)
アラン・ポール(1949 - )、ジャニス・シーゲル(1952 - )と シェリル・ベンティーン(1954 - )。

かなり昔に「ブランデー 水で割ったらアメリカン」というコピーのCMで、‘American Pop’という曲(1983年のアルバム“Bodies and Souls”に収録)を歌っていたのを、記憶している方もいらっしゃるかもしれません。

アンサンブルが美しくコーラスの技術は完璧、アレンジも素晴らしく、ステージングも華麗。
グラミー賞を何度も受賞し、ジャズ・ヴォーカルの枠を超えたあらゆるジャンルの作品を残しています。

その中で、ジャズの楽曲を中心に集めた主なアルバムとしては・・

1985年の“Vocalese”。文字通りのタイトルですね。
ジョン・ヘンドリックスが歌詞をつけ、ディジー・ガレスピー、トミー・フラナガン、マッコイ・タイナー、レイ・ブラウン、ロン・カーターといった蒼々たるメンバーが加わっています。
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1997年の“Swing”。
こちらはグレン・ミラーやベニー・グッドマン等、1930〜1940年代のスゥイングのスタイルの曲。
ベースのレイ・ブラウンやヴァイオリンのステファン・グラッペリが加わっています。

そしてなんとチック・コリアの曲を集めた2009年の“The Chick Corea Songbook”!

手元にあった21枚のアルバムを年代順に聴いて、はじめて聴く方のために今回選んだのは、1987年の“Man-Tora! Live In Tokyo”。
日本でのライブ盤なので、親しみやすい選曲です。
‘Root66’ ‘How high the moon'といったスタンダードナンバーや、ウェザー・リポートのヒット曲‘Birdland’のヴォーカリーズなど、マントラのCDでお馴染みの曲がいくつも収録されています。
ライブなのにこんなに演奏のクオリティが高いなんて驚きです。

マントラは、今のようにがっつりジャズを聴いていなかった頃、親しみやすくて良く聴いていたグループです。
久しぶりに今回まとめて聴いて、懐かしい青春時代の思い出がよみがえってきました。。。。

ジャズ・コーラスを更に聴きたい方にお勧めしたいのはNew York Voices 。
1989年に初CDをリリースしているグループです。
当初は5人でしたが現在のメンバーはDarmon Meaderら4人。
アレンジャーでありサックス奏者でもあるDarmon は、以前にこのブログで紹介したCD“THE ROYAL BOPSTERS PROJECT”でジョン・ヘンドリックスやアニー・ロスらと共演していた方です。

このグループもあらゆるジャンルの曲を歌っていますが、ジャズファンの方はマントラよりもこちらの方がお好みかもしれません。
‘Cotton tale' や‘Clondburst’といったヴォーカリーズの曲をランバート・ヘンドリックス&ロスと聴き比べるのも興味深いですし。

お勧めCDは“Sing Sing Sing”(2000)と“New York Voices Live”(2013)。
アカペラでジャズのサウンドが堪能できるのもジャズ・コーラスグループならでは。
前者のCDでは‘I'll be seeing you’、後者のCDでは‘Almost like being in love'が必聴です。
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アカペラで歌ったヴォーカリーズの曲‘Farmer's Market'は、カウント・ベイシー楽団と共演したアルバム“Count Basie Orchestra with the New York Voices - Live at Manchester Craftsmen's Guild”(2005)に収められています。

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posted by ありあ at 01:30| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2016年05月12日

ヴォーカリーズ・コーラスグループのレジェンド:ランバート・ヘンドリックス&ロス〜はじめて聴くジャズボーカル(14)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第14回目はLambert, Hendricks & Ross(1957 – 1964)。
無性にジャズが聴きたくなる時に、私が最もよく聴くのが彼らのCDです。
デイヴ・ランバート、ジョン・ヘンドリックスとアニー・ロスの3人がメンバー。

Vocalese というのは、ジャズの演奏用に作られた曲やジャズ・ミュージシャンのアドリブのパートに歌詞をつけて歌う歌唱法を指します。
彼らがすごかったのは、カウント・ベイシー楽団のアンサンブルをコーラスにしてしまったこと。
ソロのパートだけでなく、トランペットやトロンボーン、サックスといったアンサンブルのところにも歌詞をつけて歌っちゃうんですから!
多重録音を重ねた末の作品がこちら。“Sing A Song of Basie”(1957)
新しいアプローチの音楽を追究していく発想の自由さに、ジャズミュージシャンとしての魂が感じられます。
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はじめて聴く方へのお勧めCDならこちら。"The Hottest New Group In Jazz"(1960)
サマータイムとかモーニンとかチュニジアの夜といったおなじみの曲が入っています。
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ヴォーカリーズを聴くくらいなら、ジャズ・ミュージシャンのオリジナルを聴いた方がいいという方もいるかもしれませんが、オリジナルの演奏と聴き比べることで、ヴォーカリーズならではの楽しみ方ができると思います。
楽器ごとの音の特徴をこんな風に人間の声で表現できるのか!とか
こんなジャズのフレーズにはこういった歌詞や単語が馴染むのか!とか、色々な発見ができますよ。

彼らのアルバムは、超高速のスキャットの応酬もあってスリリングなのですが、声の質や歌い方が荒いものもあるので、ハーモニーの美しさを聴かせるタイプのコーラスを聴きたいと思う方は少し面食らうかもしれません。
しかしながら、ジャズ特有の疾走感や躍動感(ドライブ感といった方がいいのかも。。。)を感じることができるのは、このグループ以外にないのでは?と思うのです。

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posted by ありあ at 04:04| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2016年04月14日

儚げに歌うトランペッター:チェット・ベイカー〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(13)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第13回目はChet Baker(1929 – 1988)です。

楽器を演奏するミュージシャンで歌 “も” うたえる人は少なくないと思うのですが、
彼の場合は、楽器の演奏家としてもヴォーカリストとしても高く評価されている。
しかも楽器と声が一体になっていて、歌のメロディのようにアドリブのフレーズを楽器で奏でている。
そんなジャズ・ミュージシャンは、ルイ・アームストロングとチェットぐらいなのではないかと思うのです。

二人ともトランペット奏者なのですが、それも偶然ではないような気がします。
声帯を振動させて私たちが歌を歌うように、トランペッターは唇を振動させてメロディーを演奏しているらしい。
唇で “歌って” 演奏する・・そんな楽器の特性が、優れたヴォーカリストを輩出する背景にある気がしてなりません。

今回はチェットが歌を披露しているアルバムのうち、手元にあった32枚を年代順に聴いて、お勧めをリストアップしました。

1枚目は名盤と言われている“Chet Baker Sings”(1956)。
ストレートに声が伸びたけだるい物憂い歌い方が特徴的。
この中の‘My Funny Valentine' は彼のアルバムの中で数多く歌われている代表曲です。
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息をたくさん吐きながら声を出しているのは、トランペット奏者だから?と思っていたところ、
ウイキペディアに「チェットの歌い方にジョアン・ジルベルトがインスパイアされ、ボサノヴァ誕生の一因となったと言われている」と書かれていました。
なるほど。そういえば私も、ボサノヴァの曲を歌うときは息をたくさん吐きながら・・・なんて師匠から教わりましたっけ。

次のお勧めは“Chet Baker Sings;It Could Happen to You”(1958)。
当時の人気ぶりを思わせるアイドル歌手のようなジャケットですが、ミュージシャン好みの選曲と、“Chet Baker Sings”とは若干イメージが異なるエモーショナルな演奏が楽しめます。

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チェットのジャズの演奏スタイルはウェストコースト・ジャズと言われているもので、50年代にアメリカ西海岸で白人中心に演奏された明るく軽やかなジャズ。
それに対しこのアルバムで共演しているのは、ピアニストのケニー・ドリュー、ベーシストのサム・ジョーンズ、ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズといった、東海岸で黒人を中心に演奏されたハード・バップと呼ばれる演奏スタイルのミュージシャンたちです。
共演者が変わると、演奏の印象も変わるんですね。

後年のチェットは、麻薬に溺れて悲惨な生活を送るようになり、全盛期は50年代だと言われていました。
そんな時代に録音された彼のヴォーカル曲を集めた3枚組のCDが発売されています。
“Chet Baker Sings:The Complete 1953-62 Vocal Studio Recordings”(2014)
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最後に。ジャズ・ヴォーカルを勉強している方は、歌だけでなく、彼のアドリブ・フレーズにも、是非注意して耳を傾けていただけたらと思います。
ウェストコースト派の演奏だからでしょうか、フレーズが印象的で覚えやすいですし、歌ったあとに引き続きトランペットで演奏されるアドリブのフレーズが、歌のイメージそのままの演奏になっていて、ヴォーカリストがスキャットをする時の格好のお手本になると思うのです。

どんな音が使われているのか気を付けながらCDにあわせてフレーズを口ずさんでいると、サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドのスキャットとは違う、楽器奏者ならではのジャズのフレーズを、学ぶことができるのではないかと思います。

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posted by ありあ at 03:22| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2016年02月21日

円熟したエンターテイナーの魅力:メル・トーメ〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(12)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第12回目はMe Tormé(1925 – 1999)。
繊細でソフトな歌声から「ヴェルヴェットの霧」The Velvet Fogと呼ばれていたそうです。

これまでメル・トーメのCDをまとめて聴いたことがなかったのですが、今回は手元にある30枚のアルバムを年代順に聴いて、お勧めをリストアップしていきたいと思います。

彼の若い頃のアルバムでは、ポピュラーソングの歌手のような歌い方が多かったように思うのですが、年齢を重ねるにつれて、特にライブ録音で、ジャズ・シンガーとしての本領を発揮しています。

お勧めはビッグバンドをバックにした“The Great American Songbook”(1992)。  
この時の彼は67才なのですが、ヴェルヴェット・ヴォイスを活かしてスキャットを軽快にこなしたり、美しいハイトーンを響かせたりしていて、全く年齢を感じさせません。
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この頃のライブ録音には、ほかにも1992年の“Sing Sing Sing”や 1993年の“Live at the Playboy Jazz Festival”などがありますが、おなじみのスタンダードをメドレーで次々披露したり、速いテンポの曲でオーディエンスを盛り上げるなど、エンターテイナーぶりを遺憾なく発揮しています。

次にお勧めするのは、盲目のピアニスト、ジョージ・シアリング(George Shearing)(1919- 2011)と共演している一連のアルバム。
スタンダード曲の定番「バードランドの子守唄」を作曲した人です。

メル・トーメとジョージは10年に渡ってコンビを組んでいましたが、中でも1982年の“An Evening with George Shearing & Me Tormé”はグラミー賞を受賞しています。
「バードランドの子守唄」だけでなく、‘You'd Be So Nice To Come Home To’といった大スタンダードナンバーが多く取り上げられていて、選曲も親しみやすくなっています。

ジョージが当時Duoを組んでいたのがブライアン・トーフ(Brian Torff)という1954年生まれの若手のベーシスト。
彼の演奏は、しっかりとビートを刻みながらピアノの旋律に絡んでいく、私好みのスタイルです。
そこにメール・トーメが加わる3人のインタープレイがスリリング!
この3人の演奏は“Top Drawer”(1983)でも楽しむことができます。

今回彼のCDを順に聴いていきましたが、年齢を重ねるほど、ジャズ・ヴォーカリストとしてのエンターテイナーぶりが増していっているような印象を受けました。
ジャズは難しい・・といった先入観をお持ちの方も、メル・トーメのCDを聴くと、ジャズが楽しいものだということにあらためて気づかれるのではないかと思います。

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posted by ありあ at 22:47| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2016年01月24日

Bluesの帝王:ジョー・ウイリアムス〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(11)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第11回目はJoe Williams (1918 – 1999)です。

代表曲に‘Every day I have the Blues’があるからでしょうか、ジョー・ウイリアムスといえば真っ先に思い浮かぶのがBlues(1コーラスが12小節の形式の楽曲)。
「ブルース」という言葉からは「暗い」イメージが浮かびますが、むしろ軽やかにSwingする艶のある太い声が特徴的です。

手元にある28枚のアルバムを、今回も年代順に聴いてお勧めのアルバムを選びました。
最初にご紹介するのはグラミー賞にも輝いた“Nothing but the blues”(1984)。
Red HollowayのサックスやJack McDuffのオルガンといったミュージシャンのソロも楽しめます。
この中の‘Alright, OK, You Win’も彼のレパートリーで有名な曲です。
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ライブ盤のお勧めは“Joe Williams Live”(1973)。
アルトサックス奏者のキャノンボール・アダレイ、その弟のコルネット奏者であるナット・アダレイと共演しているアルバムです。
‘On Green Dolphin Street’ でのパワフルなスキャットを聴くと、ブルース・シンガーとしてだけでなく、ジャズ・ヴォーカリストとしての彼の魅力に取り憑かれてしまいます。

カウント・ベイシー楽団の専属歌手だったジョーは、同楽団と共演しているアルバムも数多く残しています。
1956年の名盤“Count Basie Swings, Joe Williams Sings”で、ビッグバンドをバックにどっしりと歌うジャズ・ボーカルの醍醐味を味わうことができます。

ジョー・ウイリアムスのようなヴォーカリストが好みの方にはKevin Mahogany(1958−:ケヴィン・マホガニー)もお勧めです。
パワフルにswingするバリトンvoiceで、ジョー・ウイリアムスの再来と言われた人。

アルバム“Songs and Moments”(1994)には、アルトサックス奏者のSteve Coleman、ピアニストのJohn Hicks、ドラマーのMarvin Smitty Smithといった人たちが参加しています。
この中の‘West Coast Blues’はウェス・モンゴメリーの曲。私も歌ってみたいな〜。

そしてアルバム“Pussy Cat Dues”(2000)は、私が敬愛するベーシストでありカリスマ的なバンド・リーダーであるチャールズ・ミンガスの曲を集めて歌っています!
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posted by ありあ at 06:09| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2015年12月23日

型破りな天才ヴォーカリスト:マーク・マーフィー〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(10)

今回から何回かにわたって、私が大好きな男性ヴォーカリストを取り上げていきたいと思います。
まずご紹介するのは、私が最もリスペクトしているMark Murphyです。
1932年生まれの彼。今年83歳だったのですが、去る10月22日に残念ながら亡くなられました。
来日時のライブを楽しみにしていたのですが、もうそれもかなわないのかと思うと心が折れそうです。。。。。。

スキャットやヴォーカリーズ(名盤のミュージシャンのアドリブに歌詞をつけて歌う唱法)
での超絶過ぎる技巧。
自由なアプローチでジャズそのものを歌い、ある時はジャズというジャンルを軽々と超えていく。
エキセントリックに迫ってくるかと思えば、哀愁を漂わせて静かにストーリーを語る変幻自在なvoice。
“声”という楽器を駆使して様々な表現の可能性を展開してくれるところが最大の魅力です

はじめての方にお勧めするのは名盤の“Rah!”(1961)。
中でも、マイルスで有名な‘Milestones’は何度聴いても飽きない名唱です。
トランペットのクラーク・テリーやブルー・ミッチェル、ピアノのウイントン・ケリーやビル・エヴァンス、ドラムスのジミー・コブといった名だたるジャズ・マンが共演している点でも聴き応えがあります。
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私が彼のアルバムを愛聴しているのは、ジャズ・ミュージシャンがレパートリーにしているbopの曲が数多く取り上げられているから。
しかしながら今回ネットで検索したところ、そんなアルバムの多くが今では手に入りにくくなっているのが残念です。

CD化されていないものもあるので、私の手元にあるアルバムは44枚程しかないのですが、その中で、現在入手しやすいかどうかにこだわらずお勧めするならば“Stloen...And Other Moments”(1992) がイチ押しです。
それまでにリリースされたアルバムの中から選りすぐった演奏を集めたお得な2枚組。
そのうちDisc Twoには、Stolen Moments、Boplicity、Parker's Mood、Red ClayといったJazz Tuneが並び、テナー・サックスのマイケル・ブレッカー、アルト・サックスのリッチー・コール、トランペットのランディ・ブレッカーといったミュージシャン達が、エキサイティングなアドリブを披露しています。

比較的手に入りやすいアルバムの中からお勧めしたいのは“Midnight Mood”(1970)。
アカペラで始まり、ごきげんにswingする‘Jump for Joy' は、高校・大学時代に好きでよく聴いていた記憶があります。

彼の影響を受けたヴォーカリストに、バリトンヴォイスの奇才、カート・エリング(Kurt Elling)(1967−)がいます。
彼はスキャットがスリリングなだけでなく、歌詞もアドリブで歌っているらしい。。。。。
グラミー賞をとっていたり、グラミー賞候補になったり、といった高評価のアルバムがいくつかありますが、まずはデビュー・アルバムの“Close your Eyes”(1995)をお勧めします。
ここでは、ハービー・ハンコックの‘The Eyes of Hurricane' やウェイン・ショーターの‘Dolores ' といった曲が取り上げられています。
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どちらかというと、男性ヴォーカルの方が“ジャズ”を感じさせてくれるアルバムが多くて私好みです。
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posted by ありあ at 23:37| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2015年12月07日

クールな中の情熱:クリス・コナー〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(9)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第9回目はChris Conner(1927-2009)です。

彼女の歌は、抑制がきいてよくコントロールされたハスキーな歌声で知られています。
はじめにお勧めするのは名盤と言われている"Sings Lullabys of Birdland"(1954)。
スタン・ケントン楽団から独立し、ベツレヘムというレーベルに吹き込みをしていた頃の曲が収録されているアルバムの中でも、比較的なじみ深いスタンダートナンバーが収められています。

中でも「バードランドの子守歌(‘Lullaby of Birdland’)」でのリズムのノリ方はクールで素敵。
例えば‘Have you ever heard two・・’とか‘Flying high in birdland’といった歌詞のところ。
はじめてジャズを歌う方は、タッカタッカタンタンとはねたリズムで歌いがちですが、彼女は全体的に音価(音の長さ)を長くとり、youやeverのverのところ、Flyingのingや high inのinのところにアクセントをつけて、ジャズ特有のswingのリズムを歌詞で表現しています。
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この時代のアルバムでは、息をたっぷり吐くハスキーな歌声を聴くことができますが、アップテンポな曲で声を張り、クリアに声を共鳴させている歌を聴くことができるアルバムもあります。
また彼女は、原曲を崩さずにストレートに歌う歌手だとも言われていますが、ライブではメロディを思いっきりフェイクしてホットに歌ったりもしています。

その意味でお勧めするCDは、ギターのケニー・バレルがメンバーに加わっている“Chris In Person”(1959)。
大スタンダードの‘Misty’を聴いていただくとわかりやすいですが、小節のbarをまたいだたっぷりとしたフレーズを歌っていたかと思えば、フレーズの最後はうまくバンドの演奏に追いついて巧みにまとめているところが圧巻です。
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この記事を書くにあたり、手元にあった25枚のCDを、例によって年代順に聴いていったのですが、派手にスキャットをしなくても、どのように歌えばジャズになるのか、彼女の歌からあらためて教えられました。
聴きながら、このフレーズはおいしい!というところは、コピーして一緒に歌いながら順に聴いていったのですが、これからジャズ・ボーカルを勉強しようという方にも、是非聴いて味わっていただきたいシンガーだと思います。

‘クリスの歌が好み’という方には、クールな唱法の中の技が光るアイリーン・クラール(Irene Kral:1932-1978)はいかがでしょうか。
例えばジュニア・マンス・トリオとの“Better than Anything”(1963)。
この中のタイトル曲や‘The Meaning of the Blues’は、私好みの曲です。
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2015年11月12日

ジャズシンガーのレジェンド:ビリー・ホリデイ〜はじめて聴くジャズ・ボーカル(8)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第8回目はBillie Holiday(1915-1959)です。
今年で生誕100年!

これまでサラ、エラ、カーメンという女性ジャズ・ボーカリストの御三家と言われるシンガーを取り上げましたが、ビリーは多くのシンガーに最も影響を与えた史上最高のジャズシンガーとして評価されています。

彼女を信奉している歌い手やリスナーの方に比べたら、彼女の歌の良さについてまだまだ理解が足りないと思うのですが、今回は手元にあった32枚のCDを年代順に聴き、私なりの感性で、このCDは素晴らしいな、お勧めしたいなというものを選んでみました。

ビリーの歌は、30年代半ばから40年代にかけてが絶頂期だと評価する方が多いのではないかと思います。
高い音程の声がクリアにストレートに響いて美しい、この時期の名唱を厳選したお得なベスト盤が“Lady Day"です。
Lester Young(ts)をはじめとし、Buck Clayton(tp)、Benny Goodman(cl)、Teddy Wilson(p)、Walter Page(b)、Jo Jones(ds)といった蒼々たるメンバーが名前を連ねています。
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ビリーは声量がないし音域も広くないけれど、オリジナリティにあふれた歌を歌っていたところが、まさに「ジャズ」シンガーとして、多くの偉大なジャズ・ミュージシャンから評価されていたのだと思います。
リズムはゆったり大きくスイングするノリが特徴的。

前にこのブログでも紹介したM.C.Gridleyの“Jazz Styles, 11th"(2011)には、単語やフレーズの出だしが遅れるビリーのリズムは、ルイ・アームストロングの影響を受けていたと書かれていたのですが、外山嘉雄氏のWEBサイトによれば、サッチモは当時のバンドが2ビートで演奏していた中で、4ビートのスイング感で演奏し、観衆を熱狂させたそうです。
 http://satchmo.seesaa.net/article/28034427.html
ビリーの歌が持つノリの素晴らしさも、そのあたりからきているのかもしれませんね。

この時代のジャズはズンチャ、ズンチャという2拍ノリのスイング・ジャズ。
しかも録音状態がよくないので馴染めない、という方も少なくないのでは?と思います。
私の好みのビリーのCDは50年代半ばに録音されたもの。
ノーマン・グランツという人が新しい時代のプレイヤーを選び、30年代のビリーとは違う新しさを引き出そうとプロデュースしたVerveレコードでの作品群です。

その中でお気に入りは“Stay with Me"。
1954年に録音されたクラリネットのTony Scottのバンドによる演奏と、1955年録音のCharlie Shavers(tp)、Oscar Peterson(p)、Herb Ellis(g)、Ray Brown(b)、Ed Shaughnessy(ds)といったメンバーによる演奏が収められています。
彼女の十八番である‘What a Little Moonlight can do’を“Lady Day"に収録されていたバージョンと聴き比べていただくと、こちらのCDの演奏が4拍ノリになっていて、まさにモダンジャズの時代の演奏になっていることがよくわかると思います。ピアノはオスカーピーターソン。
ミュージシャンのソロもどれも素晴らしいです。
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同じ楽しみ方ができるこの時期のCDに1957年録音の"Body and Soul"があります。
"All Or Nothing At All"というCDにもこの日のセッションが分かれて収録されていますが、中でもバーニー・ケッセルのギターが素晴らしいです。

この時代のCDでは、ミュージシャンのアドリブにも注意して耳を傾けたい。。。
ビリーの歌の雰囲気にあっていてかつモダン・ジャズの典型的なフレーズが演奏されているので勉強になります。
オブリガード(歌と同時に演奏されて歌のメロディの合間を埋める短いフレーズ)も歌をひきたてていて美しい。

この時代のライブ盤では、ミュージシャンのソロ回しがない分、ビリーががっつりと歌っている、1956年録音の“The Essential Billie Holliday:Carnegie Hall Concert"で、彼女の歌の素晴らしさが堪能できます。
ライブでの演奏にもかかわらず、曲のテンポを自在にコントロールしてバンドをひっぱっているところに脱帽!

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ドラッグで身を持ち崩し、声の衰えが顕著だった晩年のビリーですが、じっくり聴いてみると評価できる点があまたあることに気づきます。


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2015年10月15日

フェイクの女王:カーメン・マクレエ 〜はじめて聴くジャズボーカル(7) 

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第7回目はCarmen McRaeです。

彼女の歌の聴きどころはフェイクの巧みさではないでしょうか。
原曲のメロディが見事に崩されていても、歌詞が丁寧に歌われているので、語られている物語が目の前に見えるかのようです。

お勧めしたいのは、1972年のライブ盤 "The Great American Songbook"
アメリカが産んだ偉大な作曲家達の歌が盛りだくさんなので、ジャズの曲をあまりご存じない方でも楽しんでいただけると思います。
そしてこのアルバムでも、ギタリストのジョー・パスがしっかりとからんでいます!
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1曲目はデューク・エリントンのサテンドール。
多くのシンガーが歌っているお馴染みの曲ですが、ここではゆったりとしたベースとのデュオで始まります。
テンポが変わればノリ方も変わるし、メロディも自ずと変わっていきますよね。
このアルバムは、私の好きなミディアム・テンポの4ビートで演奏されている曲が比較的多いのですが、
どんなテンポやリズムで歌うのか、どんな楽器と歌うのか、どこからフレーズを歌い始め、どこまで声を伸ばして余韻を保つのか。
この記事を書くにあたって、手元にあったカーメンのアルバム40数枚ほどをあらためて聞いてみたのですが、
ボーカリストとして彼女の歌から学ぶことが多く、私自身も気づかないうちに影響を受けていたことにあらためて気づかされます。

カーメンは80年代に入ってからも素晴らしいアルバムを数多く出していますが、
次にお勧めする1枚は、1957年の"After Glow "を選びました。
この時期のカーメンは声がつややかでビロードのよう。
しかも演奏はレイ・ブライアントのトリオです。
中でも2曲目の‘Guess Who I Saw Today’は、語っている主人公が目に見えるようで
聞く度に目元がうるうるしてしまいます。
どんな歌なのか、是非一度聞いてみてくださいませ。

カーメンから影響を受けたシンガーに、私が好きなキャロル・スローン(Carol Sloane)がいます。
“Songs Carmen Sang”(1995)というカーメンに捧げたアルバムもありますし、どのアルバムもはずれなしでお勧めです。

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2015年09月11日

20世紀を代表するトップ・女性ジャズボーカリスト:エラ・フィッツジェラルド 〜はじめて聴くジャズボーカル(6)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
第6回目はElla Fitzgerald です。

女性ジャズボーカリストとして別格であるビリー・ホリデイを除けば、エラは、前回ご紹介したサラ・ヴォーンと次回ご紹介するカーメン・マクレイと並んで、女性ジャズ・ボーカリストの御三家の一人に数えられています。
ジャズ・ボーカリストを志す人の多くが、彼女のスキャットに驚愕し、影響を受けたと思いますし、エラの大ファンというわけではない私ですら、手元のCDを数えただけで、50枚を越えています。

多くの方がお勧めしている"Mack The Knife - Ella In Berlin”(1960)は、是非聞いていただきたいライブアルバム。
How High The Moonでは炸裂するスキャットを、SummertimeやMistyといった大スタンダードナンバーでは、しっとりとした美しい歌声を堪能できます。
緩急のある点が彼女のライブの特徴と言えますし、私自身がライブの構成を考える上でもこの点は大いに参考になっています。

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エラは様々なタイプのCDを残しています。
50年代半ばから60年代半ばまでにリリースされた作家別のソングブックのシリーズでは、ボーカリストの模範になるような、原曲の良さを活かした美しい歌唱を聞くことができますし、数多くのライブ盤ではサービス精神にあふれたノリのよさで楽しめます。

そんな中でもう一枚お勧めとして選んだのは ギタリストのジョー・パスと共演した"Fitzgerald and Pass... Again"(1976)。
私の手元にジョー・パスとエラのデュオによるCDが6枚あり、この機会にとおして全部聞いてみたのですが、
スタジオ録音でのこのCDは、エラの表現の繊細さが際だっていて、エキサイティングなライブアルバムとは異なる楽しみ方ができると思います。

今回紹介した2枚は、どちらもグラミー賞をとったCDです。
といってもエラはグラミー賞を13回受賞しているとか。
まさに20世紀を代表するトップ・女性ジャズボーカリストですね。

この記事を書くにあたって、エラのCDをあらためて集中して何枚か聞いてみたのですが、原曲の良さを活かした歌唱であっても、しっかりとジャズのノリになっている。
 # 当たり前のようですが、我々凡人にとっては実は簡単ではないのです #
ということで、今回エラの凄さをあらためて再評価した次第です。。。。今さら遅いぞ!

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2015年08月16日

卓越したBop Singer:サラ・ヴォーン〜はじめて聴くジャズボーカル(5)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
久しぶりにお届けする第5回目は私の大好きなSarah Vaughanです。

といっても聞きはじめた頃は、オペラ歌手のようなビブラートや地の底から響くような低音域の声が気になって、
あまり好きになれなかったのです。

しかしながら、いわゆる名盤をじっくり聴いてみると
音符の長さ一つ一つをたっぷり歌っていて、ミディアム・テンポの曲が抜群にswingしている。。。 
なるほどこういう風に歌えばジャズらしくなるのかと気づかされました。
スキャットが管楽器奏者そのものなのも、音域が広いために自在にフレーズをコントロールできるからではないでしょうか。

はじめて聴く方のためにまずお勧めしたいのは、高音域が美しい50年代中期のCD。
“Swingin' Easy”(1957)は1曲目の‘Shulie a Bop’という曲からswingしまくっていて楽しめます。
大スタンダードナンバーの All of Me や Body and Soul も、
大胆にフェイクしてメロディラインを変えたり、スキャットしたりしていますので、
どんなフレーズを歌っているのか 是非聴いて原曲との違いを確かめてみて下さい。
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この時期のCDがお勧めなのはドラマーのロイ・ヘインズ(Roy Haynes)が加わっているから。
あざやかなブラシワークのあいまの「オカズ」(曲のアクセント)が絶妙で
こんな風にたたいて欲しい! こんなドラマーとご一緒したい!とつくづく思ってしまいます。。。
#ちなみに私は行きそびれましたが、この方この5月に90歳のバースデイで来日していました。
 まさにレジェンドですね。

後期のCDをお勧めするなら“Crazy and Mixed Up”(1982)
最初から最後までスキャットで歌う「枯葉」が有名で、ギターのジョー・パス(Joe Pass)とのからみも聴きどころです。
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2015年04月21日

迫力満点のシャウト!:ダイナ・ワシントン〜はじめて聴くジャズボーカル(4)〜

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
前回は1958年のニューポートジャズフェスティバルの様子を記録したドキュメンタリー『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer's Day)』から、白人女性ボーカリストの最高峰、アニタオデイの名唱をご紹介しました。

あのDVDの中で、アニタと対照的な力強くて迫力のある歌唱を聴かせてくれるのが、黒人女性ボーカリストの Dinah Washingtonです。
この中で歌っている‘All of Me’は、ジャズ・ボーカルのレッスンで誰もが始めに取り組む曲なのですが、
彼女独特の歯切れよくシャウトする歌い回しを聞いていると、あんな風に私も歌ってみたいとあこがれてしまいます。

ダイナははじめブルース歌手だったそうですが、ジャズやポップスのスタンダード・ナンバーも数多く録音しています。
その中の極めつけがこれ。スタジオ・ライブの形式で録音された"Dinah Jams"(1954)
トランペットのクリフォード・ブラウン、メイナード・ファーガソン、クラーク・テリー、テナーサックスのハロルド・ランド、ピアノのジュニア・マンス、ドラムのマックスローチといった、名だたるミュージシャンとの熱いセッションが繰り広げられています。

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ジャズ・ボーカルのCDがお勧めなのは、ストレートなメロディーで歌うボーカリストの歌を聴いているうちに
ジャズのスタンダードナンバーが覚えられ、難しいと思っていたジャズが身近かに感じられるようになること。
ボーカリストと演奏しているミュージシャンが一流なら、聴き応えも倍増です。
その意味でこのCDはまさに必聴アルバム。

‘Summertime’でのメイナード・ファーガソンのダイナミズム(強弱)にあふれた節回しや
‘Come rain or come shine’(降っても晴れても)で、ダイナが勢いよくシャウトしたところでは
聴いている聴衆と一緒に思わずため息が漏れてしまい、時空を越えて一体化するライブ感覚が味わえます。

ダイナのように、ジャズやブルースを幅広く歌っている黒人女性シンガーで私が好きなのが Nancy Wilson (ナンシー・ウィルソン)。
ナンシーの歌はダイナミズムに溢れていてドラマチック。。
新曲をどう料理するか考える時には、まずはじめにナンシーがどう歌っているか聴いて考えています。

ミュージシャンの演奏も堪能できるナンシーのお勧めCDはこちら。
“Nancy Wilson & Cannonball Adderley”(1962)

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2015年03月18日

白人女性ボーカルの最高峰:アニタ・オデイ〜はじめて聴くジャズボーカル(3)

はじめてジャズボーカルを聴く方のために私なりに選んだボーカリストとCDのご紹介。
今回からはしばらく、歴史的名演・名盤の中からお勧めしたいと思います。

ジャズに限らず音楽は、やはりライブを体験しないとその良さが十分わからないところがありますよね。
その意味で一度は見ていただきたいDVDが『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer's Day)』
1958年のニューポートジャズフェスティバルの様子を記録したドキュメンタリーです。
出演ミュージシャンは、ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、ソニー・スティット、ジェリー・マリガン、アート・ファーマー、ジム・ホール、チコ・ハミルトン、エリック・ドルフィーなどなど。
モダン・ジャズの黄金時代の偉大なアーティスト達の演奏がこのDVDで一挙に楽しめるというわけです。

この中で必見なのは、当時38才のアニタ・オデイ(Anita O'Day)のステージング。
品のいいチャーミングなドレスで登場したあとは、'Sweet Georgia Brown’でテンポを自在に変え、
超アップテンポの'Tea for Two(二人でお茶を)’では、演奏するミュージシャンをぐいぐい引っ張って翻弄する?!
自在にSwingする華麗なステージング・・私にとっての女性ジャズボーカリストの理想型が、このステージの中にぎゅっと詰まっている感じです。
歌っている時のジェスチャーを見ていると、彼女がどんなノリを感じながら歌っているのかがよくわかりますし。
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高校に入学してジャズ研に入った時、私にあっていると思うから聴くようにと先輩から勧められたのがアニタでした。
かすれ声で声量がなく、音程もフラットしているように聞こえますが、絶妙なSwing感がコントロールされている。
声が美しければジャズ・ボーカリストとして優れた演奏を残せるというわけではないんですね。
って、当時私が音痴だったからアニタを聴いて元気だせっていうことだったのか???

これからジャズ・ボーカルを聴く方向けのお勧めCDは、同じ1958年に録音された "Anita O'Day Sings the Winners"
「A列車で行こう」や「チュニジアの夜」など、ジャズ史に残る名プレーヤーの名曲の数々を歌っているので、ご存知の曲も多く収録されているはずです。
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私が好きなアルバムは "Anita"(1955) これぞアニタ・オデイ!という小粋な名唱が満載です。

次回は、『真夏の夜のジャズ』にも登場していた黒人女性ボーカリストのダイナ・ワシントンをご紹介します。
posted by ありあ at 16:25| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2015年02月16日

正統派ジャズ・ボーカルの再来:ロバータ・ガンバリーニ〜はじめて聴くジャズボーカル(2)

色々考えた結果、はじめてジャズボーカルを聴く方向けに選んだ最初の1枚は
Roberta Gamberiniの "The Shadow of Your Smile"(2013)

幅広い声域と巧みにコントロールされた声、完璧な音程とリズム感でスキャットを繰り出したかと思えば
情緒豊かなバラードでは目の前に風景が見えるよう。
母国はイタリアとのことですが、彼女の美しい英語の発音を聴くと、
ネイティブじゃなくてもここまで歌えるのだ。。と大いに刺激になります。
その意味でも、これからジャズ・ボーカルを勉強する方にも是非参考にしていただきたい、
文句なしの歌唱力を持つシンガーです。

 
彼女のCDはどれも素晴らしいですが、このアルバムは、世界に先駆けて日本でブレイクした彼女が
日本のファンのために贈ったスペシャル・アルバムだそうで、お馴染みの曲が満載です。
例えば The Shadow of Your Smile(いそしぎ)
    Fly me to the moon
    Someone to watch over me
    Moanin’
    カーペンターズの雨の日と月曜日は や Close to you などなど

ジャズ・ボーカリストとポップスシンガーの表現の違いを聴き比べたい方は
カーペンターズの「雨の日と月曜日は」と比べてみてください。
キーも同じでストレートにメロディーを歌い、声もカレンと似ているのですが、
ノリ方が違うのがわかると思います。
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amazon.com より

ということで、こちらのCDは選曲の親しみやすさで選びましたが
私が好きな彼女のCDは、デビュー・アルバムの"Easy to Love”(2004)
この中の 'On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)'では
Dizzy Gillespi・ Sonny Rollins・ Sonny Stittの"Sonny Side Up" (1957)というアルバムの中の
彼ら3人の楽器奏者のアドリブを、ロバータが延々とスキャットでコピーしています。

彼女は、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエといった
伝説的シンガーの再来と言われてその実力を高く評価されていますが
今回ご紹介したCDの中には、カーメンと似た歌い方をしている曲も入っていたような・・・???
伝説的シンガーと言われる人たちは、後世のシンガーに大きな影響を与えてきたんですね。

次回からは、そんな伝説的シンガーたちのCDから、お勧めをご紹介したいと思います。


posted by ありあ at 22:55| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル

2015年01月18日

ジャズボーカルって何? はじめて聴くジャズボーカル(1)

ジャズボーカルのCD、どれから聴いていいのかわからないので、
こんなのがいいよっていうのをブログで紹介して欲しいというご要望をいただきました。
今日から何回かにわたって、少しずつ書いていきますね。
私はジャズボーカルの「評論家」でも「マニア」でもないですが、
日頃こう思っているよ、というボーカリストとしての自分なりの思いなら、何か語れると思いますので。

そこでまずは「ジャズって何?」ということなのですが。
四谷のジャズ喫茶「いーぐる」の店主である後藤雅洋氏はその著書『ジャズ完全入門!』の中で
「ジャズは、それぞれが個性的なミュージシャンたちの“演奏”を聴く音楽」だと書いておられます。
演奏で自分なりの個性を発揮するにしても、
クラシックの場合は作曲家の意図した楽曲の本質から外れるような演奏は認められないだろうし、
ポピュラー音楽もヒット曲であるほどその楽曲のイメージを大切にしているはず。

それに対して優れたジャズの演奏家は、曲目自体は自分の個性的な演奏を聴かせるための素材にすぎないと考えている、というのです。
ではジャズボーカルの場合はどうなのでしょう。

歌詞をつけないで全部をスキャットで歌う場合を除けば、ボーカルとほかの楽器との違いは、歌詞がついていること。
楽器でジャズを演奏する方の中にも、その曲がどんな歌詞か理解した上で演奏する方もいらっしゃいますが
ボーカリストは歌詞を実際に歌うわけですから、その歌詞が表現している楽曲の意図から外れるわけにはいきません。

楽曲そのものを大切にしながら、自分なりの個性的な演奏をするという同時に2つのことを、ジャズボーカリストは考えていかなければいけないわけで
両者をどのように両立させていくのかが難しいところだと感じています。

ボーカリストによって声のトーンや音域が違うので、それだけでも個性の違いが現れますが
メロディをくずしたり、ジャズのノリにあわせてリズムを変えたり(フェイクと言います)、テンポを変えたりすることによって、自分なりの表現が可能になります。
私の場合、こんな風に歌いたい〜〜という思いが強すぎると
この曲はもともとそういう曲じゃないのよねえ、とレッスンの時に注意されてしまうことがしばしばあり、
その度に、ジャズボーカリストとして演奏することの難しさを感じてます。。。。

(ボーカリストを含めた)ジャズの演奏家が表現する個性の違いをリスナーとして味わうためには
こんなやり方はいかがでしょうか。

・その演奏家が、自分が知っている曲をどう演奏しているか聴いてみる
・同じ曲を演奏している複数の演奏家の演奏と聴き比べる
・いわゆる「名演」「名盤」と言われているそのほかの曲の演奏を味わう

自分が知っている曲なら、ええっ?こんな演奏もあるんだ・・という新鮮な発見があるでしょうし
複数の演奏家を聴き比べることで、個性の違いがわかります。
CD自体、数多く世の中に出回っているので、どれから聴いていいのか迷いますが、
ジャズの場合、その日によって演奏が異なってくるので、
いわゆる「名演」として世の中で評価されているものから、まずはいくつか聴き比べて、
自分好みのミュージシャン(ボーカリスト)がどういうタイプなのか探っていってはいかがでしょうか。

ということで、次回からはいわゆる「名演」「名盤」の聴きどころを、順に紹介していきたいと思います。

posted by ありあ at 19:36| Comment(0) | はじめて聴くジャズボーカル