2024年03月10日

ハスキーにswingする実力派:カーリン・アリソン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(25)

大好きなジャズヴォーカリストのアルバムを(可能な限り)「全て」聴いた中から、お勧めを厳選してご紹介する、「外れなし」なこの企画。
今回は私が大好きなKarrin Allysonをご紹介します。1963年生まれで今年60歳。
フランス語やポルトガル語で歌う全曲ブラジルものや全曲が彼女のオリジナル、社会派のメッセージを込めたアルバムなど、多彩なアルバムがリリースされていますが・・・。

2002年にConcordからリリースされたアルバムIn Blueをはじめて聴いた時、やられちゃったなあ・・・と思いました。
ブルージーな曲ばかりが選曲されているのですが、そのどれもが彼女のハスキーな声にフィットして心地よく、いつまでも聴いていたくなるのです。
オスカー・ブラウンJrやジョニ・ミッチェル、アビー・リンカーン、ブロッサム・ディアリーの曲など、自分の声に合っている曲が巧みに選ばれていて。
Long As You're Living、Love Me Like A Man、Evil Gal Bluesなど、私も歌ってみたい! と思えるゴキゲンな曲が目白押しです。

カーリン・アリソンといえば、ジョン・コルトレーンのアルバムをトリビュートした2001年リリースの“Ballads”が知られていますが、私がお気に入りなのは、2006年リリースの“Foot prints”。
こちらもConcordからの通算10作目のアルバムです。
インストの曲ばかりが集められていて、ジャズ・ヴァーカリストとしての彼女の卓越したスキルにまず圧倒されます。
嬉しいのは、ヴォーカリストのナンシー・キングとジョン・ヘンドリックスが参加していること。
中でもEverybody's Boppinでの3人の自由奔放なscatの応酬がたまりません。

遡って1992年のデビュー作“I Didn't Know About You”も好きなアルバムです。
スタンダードが比較的多く選曲されているからでしょうか、scatやフェイクのアイデア、バラードでの感情の込め方と声の張り方・使い方など、大いに勉強になりました。

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posted by ありあ at 18:22| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2023年07月27日

飛翔する透明なvoice:ノーマ・ウィンストン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(24)

ロンドン生まれのNorma Winstoneは今年81歳。
つい先頃もピアニストWill Bartlettとの共作で新譜The Soundless Darkを発売したばかりで、今なお精力的に活動しています。

確かなスキルとい驚異の声域をもつ彼女ですが、その演奏は、ソフトな“声”がゆったりと空間を舞うイメージ。
来日したときにライブを聴きに行ったことがあるのですが、会場がやさしくおだやかな空気に包まれて心地よかったのを覚えてます。

1970年代後半には夫だったピアニストのジョン・テイラー、トランペット奏者のケニー・ウィ―ラ―とともにAzimuth(アジマス)というグループを結成しECMレコードに作品を残していますし、そのほかにもユニークなアルバムが数多くあるのですが。
それらをコレクションして年代順に聴いていったなかから、お勧めの必聴アルバムをピックアップしますね。

はじめにLike Song, Like Weather (1999年、Koch)
こちらはノーマと元夫のピアニスト、ジョン・テイラーとの息の合ったDUOアルバム。

私のお気に入りは1曲目のLazy afternoon。タイトルどおりけだるい雰囲気をもった曲ですが、ノーマの世界観たっぷりの歌唱がとてもあっています。
デイブ・ブルーベックの曲、Strange Meadowlarkもゆったりとしたスペイシーな歌唱。
一方ベーシストのスティーブ・スワローの曲に彼女が歌詞をつけたLadies in Mercedesは、
エキサイティングな仕上がりになっています。

次にお勧めするのはWell Kept Secret (1995年、Hot House)。
こちらはビル・エヴァンス・トリオの最晩年のドラマー、ジョー・ラバーベラを迎え、彼女のアルバムでは珍しいSWINGYな演奏も楽しめます。
ピアノはジミー・ロウルズ、ベースはジョージ・ムラーツ。
Joy Springは軽やかなscatが圧巻。

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今回私が選んだのは、いずれもスタンダードナンバーを取り上げたアルバムになりました。
リスナーとして、というよりも、こんな風に演奏できたら?!というヴォーカリストとしての憧れが(今回に限らず)お勧めアルバムのチョイスに影響しているんだと思います。

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posted by ありあ at 00:35| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2022年03月23日

驚異的ソプラノヴォイスが歌うジャズ:シェリルベンティーン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(23)

マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルのアルバムをがっつりと聴いたので、Cheryl Bentyneのアルバムもまとめて聴いてみたくなりました。

1954年生まれ、今年68歳の彼女は1979年のアルバムExtensionsがマントラ加入後発のアルバム。
マントラの活動と並行してSomething Cool(Columbia、1992)移行、ソロアルバムも出し続けています。
Popsも上手いので全てがJazzyなアルバムというわけではないですが、今回も全てのソロアルバムを年代順に聴いてJazz Feelingに溢れたお勧めのアルバムをご紹介します。

まず、アニタ・オデイに捧げたLet Me Off Uptown(Telarc、2005)。
アニタはブルースフィーリングとswing感にあふれたハスキーな歌唱が個性的なシンガーです。

アニタのアルバムに寄せたアレンジで、アニタが得意としたレパートリーを、アニタと真逆の声質の〜ピッチが完璧で声域の広い〜シェリルが、ブルースフィーリングとswing感を炸裂させて歌うととどうなるか!? がこのアルバムの聴きどころ。
超アップテンポのTea for Twoをはじめとするアニタの名唱が、全く新しい光を放って蘇ります。
ピアノとアレンジ、プロデューサーは、多くのアルバムで共演している彼女の夫のコリー・アレン。

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次にご紹介するのは、The Cole Porter Songbook(Paddle Wheel、2009)。
コール・ポーター曲集はエラやアニタ、ローズマリー・クルーニー、日本では金丸正城氏らがアルバム化しています。

シェリルのこのアルバムは、確かにこんなアプローチもあるよね。。と感心させられるアレンジの曲が少なくなく、ヒントがもらえます。
声でいかにグルーヴを表現するか勉強になるので、ジャズ・ヴォーカルの勉強をしている方なら一度は聴いていただきたいアルバム。

シェリルはThe Gershwin Songbook(ArtistShare、2010)も出していますが、こちらはクラリネットがフューチャーされている曲が少なくなく、スウィングスタイルのジャズが好みの方なら楽しめるかもしれません。

最後にコーラスのアルバムを。
Moonlight Serenade(King、2003)は聴いていて心がなごみました。
ボビー・マクファーリンのグループのアレンジャーでありシンガーのロジャー・トリース、Take6のマーク・キブル、スペシャルゲストとしてケヴィン・マホガニーが参加していて、マントラと趣の異なるサウンドが聴きどころです。

マントラではソプラノを担当しているシェリルですが、ソロアルバムではアルトで歌っている曲も多いことに気付きます。
声を巧みにコントロールし続けている彼女の歌唱から多くを学ぶことができました。

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posted by ありあ at 23:41| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2022年01月05日

絶妙なタイム感覚:シャーリー・ホーン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(8)

(かつて掲載していた記事を消してしまったので、あらためて以下に再掲しました)

以前にこのブログでも新しいアルバムを紹介したピアニスト兼ヴォーカリストのShirley Horn (1934 –2005)。
彼女がニューヨークに進出したのもマイルス。デイヴィスらの勧めがあったからで、多くのジャズ・ミュージシャンが賞賛してきた実力派です。
私の周りのシンガーにも彼女のファンが多数おられます。

今回は手持ちのアルバム23枚を年代順に聴いていきましたが、バラードの美しさもさることながら、力強いスタイルのswingもお得意で、どれがお勧めなのか迷うほどでした。

有名なアルバムではマイルスのレパートリー曲を97年に録音し、グラミー賞を受賞した“I Remember Miles”がありますが。

ここでは、マイルスが珍しくヴォーカリストのサイドマンで参加した1991年録音の“You Won't Forget Me”をご紹介します。
マイルスが、亡くなる直前のミュート・プレイをタイトル曲で披露しており、そのほかにも、ウィントン・マルサリス(tp)、ブランフォード・マルサリス(ts)、トゥーツ・シールマンス(g, harmonica)といった豪華なゲストが参加しています。

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マイルスから彼女が評価されていたのも「間」の感覚が彼の演奏に共通していたからではないかと言われたりしていました。

彼女の場合‘It Had to Be You’のようなバラードで聴かれるテンポが超スロウ。
swingする曲でも、歌うフレーズの合間にオブリガート(ソロの合間にメロディを入れること)がしっかり絡んでいます。

ヴォーカリストとピアニストが別々の場合には、フレーズの最後にヴォーカリストが意識的に間をとると、ピアニストがそれに気づいてオブリをはさんでくれて、両者の掛け合いになったりします。
あるいは、ピアニストのオブリを聴いていて、それらが終わったタイミングで歌のフレーズを入れたり。
私の場合はそんな感じで、そうやってその場その場での掛け合いを成立させるところに、スリリングな面白さがあるのですが。

彼女の場合には、それらを一人でやっているのですから、自分の歌にピアノのサウンドを絶妙に絡ませることができるわけで。
変化がつけにくくなる超スロウのバラードでも、合間にコーンとアクセントを効かせたサウンドを響かせたり。

そのほかに私が好きなアルバムは、ジョー・ヘンダーソン(ts)やエルビン・ジョーンズ(ds)が参加している“The Main Ingredient”(1996)。
比較的初期のアルバムでは“A Lazy Afternoon”(1978)。

ばりばりスキャトをしたり、原曲の姿をとどめないようなアレンジをしたりといった派手さはないですが、歌心がわかる歌伴がしたいと願うピアニストの方にも格好のお手本になる名演ぞろいです。

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posted by ありあ at 23:35| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年11月25日

歌い分ける個性が憧れ:ジャニス・シーゲル〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(22)

昔マンハッタン・トランスファーをよく聴いてました。
中でもジャニスがテーマを歌うロックテイストにあふれた楽曲が印象的でした。
Ray's RockhouseとかBoy From New York Cityとか・・。
彼女の全ソロアルバムのコレクションを年代順に聴いた中からお勧めをご紹介します。

2003年にTELARC2作目として出された"Friday Night Special"は、オルガン奏者のジョーイ・デフランセスコをフューチャーしたファンキーなアルバム。
オルガンジャズ黄金時代の1950、60年代にジャズ界の中心だった彼女の生まれ故郷フィラデルフィアを意識して作られたとのことです。
スタンダードでは、There's a Small HotelやMistyといった曲がアップテンポのノリがいいグルーヴで演奏されていて新鮮でした。

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TELARC4作目として2006年に出されたThousand Beautiful Things。
スザンヌ・ヴェガやポール・サイモン、ラウル・ミドンといったソングライターたちの楽曲をラテンテイストにアレンジしたアルバムです。
歌のアレンジとピアノはエドセル・ゴメス。
私のお気に入りはマイケル・ジャクソンが歌っていたスティービー ワンダー作のI Can't Help It・・・レパートリーに加えたくなりました。

ピアノの詩人とも呼ばれているフレッド・ハーシュとのアルバムではしっとりと歌うなど彼女の表現方法は多彩です。
なのでどのアルバムでも「マントラのジャニス」のイメージの迫力ある歌声が聴けるわけではありませんが。
彼女のソロアルバム2作目としてATLANTICから1987年に出された“At Home”では、フュージョン系のミュージシャンと共演するジャニスのハリのある歌声を聴くことができます。

今年69歳のジャニスが先頃リリースしたCryin' in My Whiskeyというアルバムも手に入れて聴いてみましたが、年代や楽曲や共演者の違いによって歌い分ける表現の中に、彼女の個性を感じることができました。

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posted by ありあ at 11:50| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年11月05日

scatが驚異的な実力派:ナンシー・キング〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(21)

1940年にオレゴン州ポートランドで生まれたNancy King。
このブログではグラミー賞にノミネートされたアルバムをちょこっと紹介しただけになっていました。

彼女はなんといってもスキャットが素晴らしい。
声域も広くて、低音部で歌っていたメロディ−ラインが急にオクターブ上に飛んで展開されたり、また低音部に戻ったり・・・するけれども、その跳躍がとても自然で。
こういう歌い方、あまり聞いたことがない気がします。

日本ではあまり知られていない歌い手かも知れませんが、私はAccuRadio というインターネットラジオではじめてこちらのアルバムを聴いてからファンになりました。

MAX JAZZから2006年に出された“Live at Jazz Standard”。
今回、彼女のアルバムを年代順に全て聞き直してみたのですが、最もお勧めなのもこのアルバムでした。

ノーマウィンストン、カートエリング、ジャニス・シーゲルなど、私が大好きなボーカリストと共演しているピアニストのフレッド・ハーシュとのDUOによるライブ盤。

この日にはじめて会った二人は、リハも打ち合わせもなく、ライブの途中で曲、キー、テンポを選んで演奏していったそうで、ナンシーに連絡せずにフレッドがライブの模様の録音を依頼した結果、この日の演奏が晴れて日の目をみることになったそうです。

スタンダードばかりなのでどの曲も彼女の自由な解釈が堪能できてお勧め。
ソロピアノにも定評があるフレッドの歌心溢れる演奏も美しいです。

圧巻は最後の曲Four。
ランバート・ヘンドリックス&ロスによるヴァージョンを使ってテンポを若干落としているのですが、そのテンポが抜群のグルーヴ感を生み出しているように感じました。

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そのほかのアルバムで面白かったのは、1999年にKing and Moore名義でCardas Recordsから出された“King on the Road”。
グレン・ムーアはそれまでのアルバムでもナンシーと何度も共演しているベーシストです。

このアルバムにも収録されているグレンとお連れ合いのキャサリンとの共作による楽曲を、ナンシーは幾度もレコーディングしているのですが、このアルバムがお勧めなのは、サックス奏者のロブ・シェプスが加わったベース、サックス、ヴォーカルというユニークな編成による個性溢れたアレンジ。

ジャズファンでよかったと思える至福の時間に感謝しました。。。。。

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posted by ありあ at 18:09| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年07月13日

洗練されたcuteな歌声:ブロッサム・ディアリー〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(20)

ニューヨーク生まれのBlossom Dearie(1924年生-2009年没)はピアノの弾き語りが素晴らしい。
彼女のソロ・ヴォーカルアルバムでCD化されたものをコレクションし、年代順に聴いてみましたので、お勧めをご紹介します。

彼女は声が可憐なことで有名ですが、それだけではありません。
澄み切った声が見事にコントロールされていて。
繊細な表現にぞくぞくさせられます。

ヴァーブレコートから出された初期のアルバム“Blossom Dearie”(1957年)や“Once Upon a Summertime”(1958年)が名盤とされていますが、聴き応えがあるのはそれより後の時代のライブ盤ではないでしょうか。

“Sweet Blossom Dearie”(1967年)は、彼女のピアノによるトリオで、ジャズクラブ、ロニースコッツでのライブ録音。
Peel Me a Grape、You Turn Me On Baby、Big City's for Me、彼女のオリジナルSweet Georgie Fameなど。
知られたスタンダードではないけれど、レパートリーにしたい魅力的な曲がたくさん収録されています。
自分の個性を活かせる選曲が巧みです。

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“Winchester in Apple Blossom Time ”(1977年)は、1曲のみロン・カーターとのデュオですが、残りは全て一人でピアノの弾き語り。
ぴんと張り詰めた空気の中で、大切な宝物をそっと手渡されたようなイメージの演奏。
ピアノのヴォイシングの美しさが際立ちます。

ベースとのDUOを堪能したい方は“Me and Phill”。
1993年のメルボルンでのライブ収録で、フィリップ・スコージーのベースが彼女のピアノにアクセントを添えています。

自分の好きな作品を録音したいと、彼女は49歳の時に、自身のインディーズ・レーベルDAFFODIL RECORDSを立ち上げました。
ブラジルの雰囲気にあふれた新たなアプローチのアルバム“Blossom's Planet”をリリースしたのは76歳の時。
私にとっての「ブロッサム・ディアリー」はストイックなジャズ・ミュージシャンというイメージです。

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posted by ありあ at 22:49| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年06月04日

哀愁漂う等身大の魅力:カーティス・スタイガース〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(19)

アイダホ生まれのCurtis Stigers は今年55歳のテナーサックス奏者。
90年代にはロックシンガーとしてヒットチャートを賑わせていたそうですが、2001年のアルバムからジャズに転向し、現在に至っています。

今回、彼の全リーダーアルバムを年代順に聴いてみたのですが、90年代の彼の歌が私には無機質に聞こえてしまって・・・。

哀愁漂う枯れた声でエモーショナルに歌う彼の魅力が、ジャズミュージシャンとの共演で生き生きと表現されているのです。
以後多くのアルバムで共演し、アルバムのプロデュースを共に担っているのが、ジャズ・ピアニストでありオルガン奏者のラリー・ゴールディングス 。

Concord Jazzから出された最初のジャズヴォーカル・アルバム“Baby Plays Around”の選曲はスタンダードだけでなくjazz tuneが豊富で、scatも見事。
チェットベーカーの持ち歌も多く収録されていますが、チェットの歌よりもダイナミクスが効いていて表現力が豊かです。

彼の歌うビートルズのI Feel Fineがいい味を出していると、以前にこのブログでご紹介しましたが、この曲が入っているアルバムが2003年の“You Inspire Me”。
どの曲もアレンジが魅力的です。
例えばスタンダード曲のI fall in love too easily。
短い曲なのでどんな風にアレンジしようか、私などいつも迷うのですが、このアルバムでは演奏時間が全収録曲の中で最も長い8分30秒!

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昨年リリースされたアルバム”Gentleman”は、オリジナル曲が多いのですが、ラリーのピアノにあわせた彼の歌は、物語を語っているよう。
歌詞をしっかり聴き取りながら味わうと、55歳の大人の男性が抱く等身大の思いが、陰影のある歌声で迫ってきます。
この中で私が好きな曲は、5拍子のHere we go again。

彼のHPでは、今のご時世だからなのか、キッチンで歌うというコンセプトで定期的に配信をしていました。
ギターを抱える彼の脇で3匹のわんちゃんたちがはしゃいでいる飾り気のなさに心が和みました。

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posted by ありあ at 02:39| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年05月20日

歌唱力抜群のピアニスト:ディナ・デローズ〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(18)

ニューヨーク生まれのDena DeRoseは今年55歳。
ジャズ・ピアニストとしてそのキャリアをスタートさせましたが、手の故障によりピアノが弾けなくなった時期があり、勧められてヴォーカルを始めたそうです。
回復した今ではピアニスト兼ヴォーカリストだけでなく、オーストリアの大学でジャズヴォーカルを教える教育者としても活躍しています。

彼女の歌の特色は、自身が奏でるピアノのフレーズとのユニゾンによる巧みなスキャット。
はじめて聞いた時、使っていたシラブルがチェット・ベイカーのように軽やかだったのが新鮮でした。
弾き語りなので、歌の合間のバッキングのタイミングも絶妙。

ヴォーカリストとしての全リーダーアルバムを年代順に聴いたので、お勧めをご紹介しますね。

デビューアルバムが出されたのは1998年ですが、初期のアルバムはスタンダードが多く選曲されていて、楽器奏者ならではのセンスにあふれたアレンジが勉強になります。
私のお気に入りは2000年のアルバム“I Can See Clearly Now ”。
2007年の“Live at Jazz Standard, Vol. 1”は、ライブならではの迫力ある演奏が楽しめます。

弾き語りで有名なヴォーカリスト、シャーリー・ホーンの名曲を集めた2014年のアルバム“We Won't Forget You: An Homage to Shirley Horn”ではシャーリーの歌と聴き比べてみました。
バラードではシャーリーの重厚な表現が圧巻ですが、swingyな曲では勢いのあるディナの歌に心惹かれました。
それぞれの個性が楽曲に生かされているのがわかります。

最後のお勧めアルバムは昨年出された“Ode To The Road”
メンバーは2004年のアルバムから共演している Martin Wind(b)とMatt Wilson(ds)。
Houston Person(ts)とJeremy Pelt(tp)に加えてシーラ・ジョーダンが参加し、ディナと2曲デュエットしているのが必聴。
私の好きなマーク・マーフィーやボブ・ドローの曲も複数取り上げられていて、ディナがどんなヴォーカリストから影響を受けていたのかがよくわかります。

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ライナーノーツの中で彼女は、「私はインプロヴァイズが好きだけれど、メロディの音をずっと変えていると、人の耳はそちらに行ってしまい、ストーリーを見失ってしまいます」と述べていました。
楽器奏者ならではのジャズ・フィーリングにあふれたフレージングは、ヴォーカリストとしての歌心によって洗練され、より魅力的なものになっているのだと思いました。

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posted by ありあ at 07:12| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2021年04月08日

歌唱力抜群・遅咲きの歌姫:ニーナ・フリーロン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(17)

話題になったヴォーカリストのアルバムはきっちり聴いておこうと思い、グラミー賞のジャズ・ボーカルアルバムにノミネートされた作品を、年代順に聴いていた時期がありました。
その中でお気に入りになったのがNnenna Freelon。1954年生まれの今年66才です。

エリス・マルサリスに見いだされて30代後半でデビューCDをリリースした後は、精力的にリーダーアルバムを出しており、ジャズ・ボーカル・パフォーマンスの部門も含めて過去に4回ほどグラミー賞にノミネートされています。

たっぷりとした発声、艶とハリのある声によるダイナミクスが見事。
サラ・ヴォーンを思わせるホーンライクなスキャットやフェイクも魅力です。

今回も全てのアルバムを取り寄せて年代順に聴いてみました。
選曲は多彩でオリジナル曲もありますが、スタンダード・ナンバーを彼女自身がどんなアレンジで演奏しているのかが興味深かったので、お勧めアルバムもスタンダードが多く収録されたアルバムになりました。

1996年の“Shaking Free”はコンコード移籍後最初のアルバム。
ミュージシャンはBill Anschell(p) John Brown (b) Woody Williams(ds)にRickey Woodard(ts,ss)やScott Sawyer(g)が加わっています。

タイトル曲はオリジナルですが、迫力満点のOut of This World、swingyなI Thought About You、ファンキーなNature Boyやディジー・ガレスピーのBirk's Worksなど、ノリのいい曲が多いアルバム。

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2010年の“Home free"もスタンダ−ドの選曲が多く、そのほかにスティビー・ワンダーやビリー・ホリデイのトリビュートアルバムも出ています。
わざわざこんなアレンジにしなくてもいいのに・・と思う曲もなくはないですが、豊かな声量と歌唱力があるからこそ発揮できる個性なんだろうなと聴きながら思いました。

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posted by ありあ at 03:07| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2020年12月21日

アニタ・オデイのクリスマスソング集

Have A Merry Christmas With Anita O'Day
こちらは、70年代のアニタがピアノトリオと演奏している曲を集めたクリスマスソング集。
耳慣れたはずの曲なのに、どれもアニタ節が冴えわたって新しい発見ができます。

ジングル・ベルはご機嫌なswingで。
メル・トーメの曲、クリスマス・ソングは、1943年のジーン・クルーパ楽団専属シンガー時代のライブ演奏も収録されているので、30年後のアニタの歌との聴き比べが楽しめます。

気が重い年末ですが、聴いているだけで心が晴れやかになって来るアルバムです。

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posted by ありあ at 19:18| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年10月19日

自由なインタープレイによる独特の世界観:シーラ・ジョーダン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(16)

1928年生まれのSheila Jordan は来月で89歳。
大江千里さんのアルバムに参加していたのを、以前にこのブログでも紹介しましたが。。。。

webを見たらこれからのライブの予定がたくさん入っているのを発見! 
まだまだ現役なんですね。
今回も手に入る限りのアルバムを年代順に聴いて、お勧めをピックアップしていきます。

チャーリー・パーカーに認められてニューヨークに進出したシーラ。
バップのミュージシャンの中でキャリアを積み、楽器奏者のようにコード進行に即したインプロヴィゼーションを展開するヴォーカリストだと言われていますが。
cuteな声で繰り出すフレージングは、彼女独特の個性に溢れたものになっています。

初リーダー作“Portrait of Sheila”を吹き込んだのは32歳の時でしたし、2作目のアルバムを日本でリリースしたのが、その13年後。
苦労しながらも独自のアプローチを切り拓き、今なお年齢を感じさせずに第一線で活躍している一途な姿に心惹かれます。

デビュー作を名盤としてお勧めする方も多いのですが、学生時代に私が良く聴いていたのが2作目のアルバム、1975年の“Confirmation”。
パーカーを敬愛していたシーラがConfirmationをどう歌うのか興味深かったですし。
God Bless The Child、My Favorite Thingsといったスタンダードの自由な歌い方や、それらを次々とメドレーで続けていくアルバムの構成が新鮮でした。

ミュージシャンの演奏もシーラの自由なアプローチにぴったりあっていて。
ピアノはアラン・パスクア(Alan Pasqua)、ベースがキャメロン・ブラウン(Cameron Brown)、ドラムがビーヴァー・ハリス (Beaver Harris)、テナーサックスが ノーマン・マーネル(Norman Marnell)。

シーラはベーシストとのDUOのアルバムが多いのが特徴的。
ほかの楽器では得られないテクスチュアやグルーブが生み出されると感じているかららしいです。

お勧めはハーヴィー・シュワルツ(Harvie Swartz)とのDUOによる“The Very Thought Of Two”。
1988年の日本初来日時のライブの模様を収録しており、彼女のライブ録音はこれがはじめてだとか。

アルバムのタイトルが洒落てます。
ほかにもI've Grown Accustomed To The Bassなんていう曲名をDUOアルバムのタイトルにしていたり。
(原曲のタイトルはbassではなくてface)

ハーヴィーとは79年のアルバム“Playground”で共演したスティーブ・キューン・カルテットで知り合い、その後も多くのアルバムで共演しています。
ライブなのでスタンダード・ナンバーの自由度が半端じゃないですし、二人の息もぴったり。

インタープレイが得意なシーラのアルバムは、やっぱりライブ盤がお勧めです。
ハーヴィーとピアノのアラン・ブロードベント(Alan Broadbent)と共演した“Better Than Anything”は、1991年の録音。
彼女が何度も吹き込んでいるお馴染みの曲が満載ですが、リラックスしたライブならではの自由なパフォーマンスを楽しめます。

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彼女のライブ、残念ながら聴きにいったことがないのですが、これから機会に恵まれるでしょうか。

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posted by ありあ at 15:47| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年08月31日

華麗なスキャットとヴォーカリーズ:アニタ・ワーデル〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(15)

Anita Wardellは1961年生まれ、英国出身のオーストラリア育ちです。
声がとてもcuteで、こんなところまで出るの?!と驚くくらいに声域が広い。
その魅力的な声で、スキャットやヴォーカリーズ(ジャズ・ミュージシャンが演奏したスタンダード曲のアドリブパートにそのまま歌詞をつけて歌うこと)を軽々こなしていくのです。

ジャズ・ヴォーカルファンなら心奪われること間違いなしの彼女がリリースした7枚のアルバムから、お勧めをピックアップしました。

1997年にリリースされた“Why Do You Cry”は、ピアニストLiam Nobleとのデュオ。
私が大好きなマーク・マーフィーとノーマ・ウィンストンが推薦の言葉を寄せていました。

ゆったりと歌うI've Never Been in Love Beforeではチェット・ベイカーを思わせるけだるい雰囲気のフレーズとシラブル(発音)でスキャットしているのですが。
Twistedのようなアップテンポの曲が圧巻。
ピアノとのデュオはこうでなくちゃ・・と思わせるインタ−プレイも随所で発揮されています。

2006年のアルバム“Noted”はよく知られた選曲で楽しめます。
Moaninではリー・モーガンのソロをヴォーカリーズ。
Watermelon ManやSidewinderといったファンキーな曲も。
この年に彼女はBBC Jazz AwardsのBest of Jazzを受賞しています。

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彼女のアルバムを聴いていると、この曲をこんなリズムやアレンジでやるんだ〜という新鮮な発見がありますし。
マーク・マーフイーは、クリアで正確な彼女のbop signingもさることながら、情感がこもったバラードに心打たれたと書いていました。

日本ではファンの方が少ないかもしれませんが、様々な角度からのジャズ・ヴォーカルの魅力にあふれた素晴らしいヴォーカリストだと思います。

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posted by ありあ at 00:19| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年07月24日

歌のうまさが際立つ実力派:ヴァネッサ・ルービン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(14)

Vanessa Rubin は1957年生まれで今年60歳。
最初のアルバムSoul Eyesをリリースしたのが1992年、35歳の時でした。
レコーディングのスタートは遅かったようですが、多くの著名ミュージシャンと共演し、作詞・作曲も手がける実力派です。

歌い方が自然でピッチも正確。
コンテンポラリーな楽曲もさらりと歌いこなし、どのアルバムでも歌のうまさが際立っています。
年代順にアルバムを聴いてピックアップしたお勧めはこちら。

はじめに1993年にリリースされた2作目のアルバム“Pastiche”。
スタンダードとJazz tuneによる選曲です。
フランク・フォスターのSimoneとダグ・カーンのArise and Shineでは、彼女の歌の実力が再認識できましたし、In A Sentimental Moodのアレンジもおもしろかった。

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最近のアルバムでは2013年にリリースされた“Full Circle”。
サックス奏者であり、作曲、編曲も手がけるドン・ブレイデン(Don Braden)との共作です。

ギタリストの デイヴ・ストライカー(Dave Stryker)や、ドンのリーダーアルバムにも参加しているハモンド・オルガンのカイル・コーラー(Kyle Koehler)が共演しており、vocalアルバムというより、Jazzミュージシャンの演奏の中に、ヴァネッサの歌が自然に溶け込んでいる感じ。

ドンやヴァネッサのオリジナル曲があったり、タッド・ダメロンのReveries do come trueという曲にヴェネッサが詩をつけていたりといった多彩な選曲。
Jazzファンの方に十分に楽しんでいただけるアルバムです。

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posted by ありあ at 01:30| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年07月03日

アーティストとしての多彩な才能:カーメン・ランディ〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(13)

先日までJazz weekのチャートに新譜の“Code Noir”がランキングしていたこともあって、しばらく前からCarmen Lundyを聴いていました。
1955年生まれの女性vocalist。
作曲やアレンジだけでなくアルバムでは様々な楽器も担当。
女優や画家としても有名らしく、アルバムジャケットに印刷されていた絵画が彼女の作品だったり。

1985年の初アルバムから始まって、年代順に全アルバムを聴きながらお勧めをピックアップしてみました。
年齢を重ねるにつれ、発声の仕方が変わっているようで、私が好みなのは、ハスキーで力が入っていない歌い方が魅力的な初期のアルバムなのですが。

作品としての充実度で選ぶなら2001年の“This Is Carmen Lundy”。
全曲オリジナル、アレンジも彼女自身で、というアルバムは色々あるのですが。
ラテンのリズムのAll Day, All Nightや、インストで演奏してもばっちり決まりそうなBetter Luck Next Timeなど。
彼女のオリジナルは、はじめて聴く曲なのに耳に残って、かっこいいな、私もレパートリーにしたいな、という曲が少なくないように思います。

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スタンダードも聴いてみたいという方には1994年録音の“Self Portrait”。
ピアノのシダー・ウォルトンやテナーのアーニー・ワッツが参加しているアルバムです。
アレンジがユニークなMy Favorite Things やストリングスをバックにゴージャスに歌うRound Midnightといったスタンダートナンバーとオリジナルで構成されている変化に富んだ内容です。

オリジナルで個性を発揮すること。
Jazz vocalistの表現方法として憧れます。

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posted by ありあ at 21:52| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年06月19日

ハイトーンのシャウトが圧巻:ダイアン・シュ-ア〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(12)

前回ダイアン・リーヴスを紹介しましたので、今回は「ダイアン」繋がりでDiane Schuurをご紹介しましょう。
1953年生まれの63歳。

1985年の斑尾ジャズ・フェスティバルに初来日したときの感動は今でも忘れません。
生まれてすぐに視力を失った彼女。
ステージの中央まで手を引かれて登場し、かわいく何度もお辞儀をしたあとに、ピアノの前に座って歌った声量の豊かなこと!
その後1986年、1987年と2年続けてグラミー賞に輝いています。

今回は初来日前年に出されて話題になった"Deedles"から、現在までの全てのアルバムを年代順に聴いて、お勧めをピックアップしてみました。

初期のアルバムやブルース・フィーリングがある曲を聴いていた時に、ダイナ・ワシントンやナンシー・ウイルソンが好きな方にダイアンはお勧めだな〜とふと思いました。

調べてみると、教会の聖歌隊でゴスペルを歌っていたり、ダイナ・ワシンントンの影響を受けていたということがわかり、やっぱりそうだったか・・・と納得した次第。
歌い回しのフレージングに似た部分が感じられたのですが、発声が黒人シンガーと異なっていて高音のファルセットが美しく、彼女ならではの個性に溢れています。
当初はカントリー・ウエスタンの曲を歌っていたこともあって、カントリー調の選曲が多いアルバムもあります。

バラエティに富んだアルバムの中で、彼女らしい歌が聴けるのがこちら。
1987年にグラミー賞を獲得した“Diane Schuur and the Count Basie Orchestra”。
ダイナミックなベイシー・オーケストラとの共演で、彼女の歌の華やかさが一層際立っていますし、ライブならではの白熱した演奏が楽しめます。
I Loves You, Porgy のようなバラードも美しい。

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ゴスペルを歌っていた影響があるかもしれませんが、3オクターブ以上出せる豊かな声域の彼女は、ハイトーンを活かしたシャウトが特徴的。

そんな彼女らしい歌を堪能できる次のお勧めは、トランペッターのメイナード・ファーガソンとの2001年の共作“Swingin' For Schuur”。
彼が率いるビッグ・バンドBig Bop Nouveau との共演によるスタンダード集です。
ハイノート・ヒッター(超高音域の演奏)で有名なメイナードの演奏と刺激しあって繰り出されるダイアンの歌が刺激的。
アレンジも興味深いです。

昨年来日したそうで、私は行きそびれましたが、次の来日を心待ちにしたいと思います。

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posted by ありあ at 17:26| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年05月26日

伸びやかな声が魅力の変貌自在なヴォーカリスト:ダイアン・リーヴス〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(11)

この度Dianne Reevesが来日することに。
私も5月31日(水)にブルーノートへ聴きに行ってまいります。
ということでここ数日、お勧めCDのご紹介準備も兼ねて、彼女のCDを聴きこんでいました。

通算5度のグラミー賞に輝く彼女は、1956年生まれの今年61才。
全てのアルバムを聴いてお勧めをご紹介したかったのですが、'87年にブルーノート・レコードからメジャー・デビューした以前の作品は手もとになくて、カバーできませんでした。

繰り返し聴いて愛聴盤にしたいと思ったのは、'87年の“Dianne Reeves”。
フュージョン色が濃いアルバムですが、今聴いても大いに楽しめたのは、かつて何度も聴いていたアルバムで懐かしかったから、という理由だけではないような気がしました。

ミュージシャンの素晴らしい演奏と一体になって天空を駆けるような彼女の歌声。
Harvest TimeやChan's Song といったハービー・ハンコックの曲が選曲されていて、彼もゲスト・アーティストとして録音に加わっています。
スタンダードのYesterdaysやI Got It Bad And That Ain't Goodも聴きごたえがありましたが、トニー・ウイリアムスや、フレディ・ハバード、スタンリー・クラークが加わっていました。

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ダイアン・リーヴスというと、このアルバムのように広い音域を自在に駆使したり、アフリカ音楽がルーツに感じられるような自由なフレージングを操るというイメージがあったのですが。
最近のアルバムでは、オーソドックスな歌い方のものが少なくない印象でした。

私がいいな♪と思ったのは、2002年に録音されたスタンダード・アルバム“A Little Moonlight”
3作連続で4度目のグラミー賞“ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム”部門を受賞した作品です。

スモール・コンボをバックに、原曲のメロディーラインを大切に歌っており、スキャットも力が入らず自然な流れ。
トランペットのニコラス・ペイトンとの掛け合いが美しいYou Go To My Head。
ギターのホメロ・ルバンボとしっとり歌い上げるDarn That Dreamなど名唱ぞろい。
セロニアス・モンクの曲にジョン・ヘンドリックスが歌詞をつけたReflectinosといった曲も。

今回の来日公演のメンバーにも、このアルバムのピアニスト、ピーター・マーティンやホメロ・ルバンボが参加するようです。

今回年代順に一通りアルバムを聴いて、ダイアン・リーヴスに対する私のイメージがかなり変わりました。
自在に変貌するヴォーカリストの来週の公演が楽しみです。

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posted by ありあ at 03:19| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年04月08日

追悼アル・ジャロウ:お勧めジャズ・アルバムは?

2月12日に76才で亡くなられたアル・ジャロウ氏。
1980年の‘This Time’に収録されたSpainや、1977年のライブ盤‘Look to the Rainbow’に収録されたTake Fiveといった名演が有名ですよね。

今回追悼の気持ちを込めて、彼の全アルバムを年代順に集めて聴いてみました。
3部門でグラミー賞を獲得しているだけあって、popsやフュージョン系のアルバムが少なくなく、全てを聴いたことがなかったのですが。
それらの中からジャズ・ファンの方にも楽しんでいただけるものをピックアップしてみました。

お気に入りでかつて何度も繰り返し聴いていたのが‘1965'。
デビュー前の1965年にピアノ・トリオと録音した未発表音源が1982年にリリースされています。
My Favorite ThingsやA Sleepin' Bee、The Masquerade Is Overなど抜群のノリ。
ライブを始める前のお勉強中だった頃の私のお手本になっていたアルバムです。
当時彼が大学生だったというのが恐ろしい。。。

2004年の'Accentuate the Positive'はミュージシャンが豪華なジャズ・アルバム。
ラリー・ウィリアムス(p)、クリスチャン・マクブライド(b)、ピーター・アースキン(ds)
アンソニー・ウィルソン(g)、ラリー・ゴールディングス(org) といった面々が加わっています。

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彼の真骨頂はやっぱりライブだと思います。
バラエティに富んだ選曲になっていますがDVDの‘LIVE AT MONTREUX 1993’にはマーカス・ミラー、ジョー・サンプル、デイヴィッド・サンボーンが参加してます。

彼のライブが見たかったのに、もっともっと活躍して欲しかったのに、残念です。。。。。

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posted by ありあ at 02:36| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年03月13日

正統派JAZZ Vocalを多彩なアプローチで:ティアニー・サットン〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(10)

ジャズファンの皆様に向けてvocalistの私が選んだ、CD全部聴きからのお勧めpick up♪
今回ご紹介するのはTierney Sutton (1963- )。

先頃授賞式があったグラミー賞でBest Jazz Vocal Albumにノミネートされていましたが、そのほかにも過去5回にわたって同賞にノミネートされている実力派。
透明感のある声や確かな音程とリズム感で、繊細かつ大胆なジャズ・ヴォーカルの醍醐味を味わうことができます。

私がお勧めを選ぶ時の基準は、愛聴盤にして繰り返し聴きたいと思ったアルバムであるかどうか。
その意味ではじめにお勧めするのは1998年にリリースされたデビューアルバム“Introducing Tierney Sutton”です。

卓越した歌唱力で、聞き慣れたスタンダードナンバーをどのようなアプローチで聴かせてくれるのかが、彼女のアルバムの聴きどころ。
ファルセットや軽やかな声質を駆使したスキャットも巧みです。

In Love in Vain とMy Heart Stood StillはベースとのDuo。
ピアノとのDuoでは、抜群にswingしているIf I Were a Bell やバラードの繊細さが卓越したIn the Wee Small Hours of the Morning。
超アップテンポのThe Song Is You 、チック・コリアのHigh Wireなど、バラエティに富んだアプローチが楽しめます。

ミュージシャンは、ピアノがChristian Jacob とMichael Lang、ベースがTrey Henry、ドラムスが Ray Brinker、フリューゲルホーンにBuddy Childersが参加。

次のお勧めは2000年にリリースされた "Unsung Heroes" 。
こちらのアルバムは、タイトルどおり楽器奏者がよく演奏する楽曲が収められたもの。

軽々とswingしているクリフォード・ブラウンのJoy Spring、ジェリー・マリガンの演奏で有名なBernie's Tune、ウェイン・ショーターのSpeak No Evil、ディジー・ガレスピーのCon Alma、ジミー・ロウルズのThe Peacocksにノーマ・ウィンストンが歌詞をつけたA Timeless Placeなど。

数々のアルバムの中でスタンダードナンバーの斬新なアレンジが聴きどころになっているのは、彼女が20年の長きにわたり、同じメンバーによるティアニー・サットン・バンドで演奏していることが大きいと思うのです。

デビュー・アルバムに参加していたクリスチャン・ジェイコブ、トレイ・ヘンリー、レイ・ブリンカーにベーシストのケヴィン・アクスト( Kevin Axt)を加えたのがメンバー。
彼らはリーダーとサイドメンではなく、バンドのCo-leaderという関係性に立って音楽をともに創っているとのこと。
お互いを知り尽くしたメンバーが、相互にリーダーシップを発揮してアイデアを出し合っているんですね。

アレンジが興味深い曲では、それらのアイデアをどんな曲にどのように発展させて応用できるのか、あれこれ考えながら聴くのも勉強になります。

バンド歴が長いので、アレンジの効いた演奏はライブでも安定しています。
2005年にリリースされた“I'm with the Band”はNYのバードランドでのライブ録音。

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ボビー・マクファーリンやアル・ジャロウを敬愛する彼女は、2013年にリリースされたジョニ・ミッチェルに捧げるAfter Blueというアルバムで、先頃亡くなったアル・ジャロウとのDUOも残しています。

次回はアル・ジャロウのアルバム紹介を是非。

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posted by ありあ at 17:37| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱

2017年02月24日

遅咲きの実力派:ルネ・マリー〜‘Jazz’Vocal 名盤・名唱(9)

CD全部聴きからのお勧めピックアップ。
今回ご紹介するのは、先のグラミー賞にノミネートされた黒人女性ヴォーカリストRené Marie。
1955年生まれの今年61歳です。

祖国アメリカをテーマにしたアルバムなど、songwriterとしてユニークな自作曲を近年数多く発表していますが、私が魅力を感じているのは、多様な発声法を駆使した変貌自在な彼女の表現法。
ダイナミクス(音量の変化)も巧みです。

スタンダード・ナンバーを多くとりあげているアルバムで、それらの曲がどのようなアプローチで演奏されているのか聴いていくと興味深い発見ができます。
そのようなアルバムは初期のものが多いですが、お勧めはスタンダードが多く収められた Vertigo(2001)。

ベースとブラシワークだけのドラムをバックに巧みなスキャットを披露するThem There Eyes。
マルグリュー・ミラーのピアノとのDuoによるバラードが美しいDetor Ahead。
南部を歌ったアカペラのDixieからの、シャウトするStrange Fruitのメドレー。
公民権運動を支持するビートルズの曲Blackbirdでは、エキゾチックな雰囲気のリズムパターンによるアレンジが個性的です。

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ライブ盤では、ニューヨークの老舗クラブJAZZ STANDARDで吹き込まれた2003年のLive at Jazz Standardで、変化に富んだ演奏スタイルでアレンジされた曲の数々を聴くことができます。

Where or Whenのようなシンプルな曲は、楽曲の良さを出しにくいのですが(少なくとも私は)、彼女は曲のイメージを豊かに膨らませて表現の可能性を試しているかのよう。
ピアノとのDuoのI Love You Porgyではダイナミクス(音量の変化)が美しい。
アカペラによるBoleroからのメドレー、レナード・コーエンの曲Suzanneでは、Boleroのリズムパターンによるアレンジが面白いです。

子育てのために歌をあきらめていた彼女が、プロのヴォーカリストとして活動を始めたのが42歳の時。
活動を反対する夫と別れ、家を出てデビュー作を発表したのだそうです。

才能に溢れていたからこそ今の活躍があるのだと思うのですが、自分の人生の舵を大きく切る決断をした彼女の歌への情熱に、私も励まされます。

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posted by ありあ at 11:53| ‘Jazz’Vocal 名盤・名唱